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人間クーラー広末さん~あめ芸より転載(1)

1 名前: 今夜は匿名 1999/07/21(水) 11:30
(なんか消されちゃったか?もう一度。)
何でも林真理子女史の「東京デザート物語」が文庫化されて、
その解説文を担当なさったそうです。
元ネタはうぷぷさんという方です。以下、転載です。

-------------------------ちなみに、この話は田舎から東京の大学へ進学した
朱子(しゅこ)という女の子が、青子(せいこ)という素敵な
叔母さんのもとで暮しながら、恋やら何やらを経験し成長していく
という、林真理子作品の中でもかなりレベルの低い一作
です。)

解説 広末涼子

朱子のことを心配しながら、結末まで一気に読んでしまいました。読みながらイメージを自分一人で作れるから本当に楽しかった。
私が一番心惹かれたのは、トリュフのお話でした。朱子がモデルに選ばれたばかりのころ、青子叔母さんが言います。モデル業界はトリュフ業界で、トリュフがどんなものかインプットされている人にはそれだけで価値があるんだと。そこの場面を読みながら、「ああ、私もトリュフか。トリュフ業界にいるんだな」と、しみじみしてしまいました。
でも、私はシメジになりたいと思いました。
青子叔母さんは、朱子に言いました。「キノコはキノコでも、シメジになって、私はとってもおいしいのにみんな認めてくれないって、ずっといじけたままでいるのね」「今にきっとトリュフじゃなくてもシメジでも構わない、おいしい朱子を認めてくれる人が現われるわ」
私は、トリュフよりもマツタケよりもシメジが好きです。トリュフよりもシメジのほうがおいしいと思う人間です。だから、私はシメジとしての私の魅力をわかって欲しい。シメジとしての値打ちを認めてくれる人と向き合っていきたいと、青子叔母さんの言葉を目で追いながら強く思いました。
朱子は私と同じ年代です。大分から上京して東京の大学に入った朱子と、高知から出てきて東京で仕事を始めた私は、新しいものばかりに出会うという意味ではやっぱり同じ体験をしています。だから未知の世界に入っていくときめきは、とても良くわかりました。ただ、私は朱子のように田舎から東京に出てきたというコンプレックスを感じたことはありませんでした。
私は、環境に染まりやすいというか、順応しやすいようです。うちのママは結婚して高知に行って十何年かたつのに、関西弁がしゃべれません。
私はママが標準語なので、標準語と関西弁をしゃべりますが、関西の友達と話していると、三日でその人に染まります。そんな感じですから、新しい現場に行っても違和感を感じることはありません。ああ、こういうものなんだといつも思います。だから東京に出てきたときも抵抗感は全くありませんでした。新しい生活に不安を抱いたり、田舎者だとか背の高いことにコンプレックスを抱いている朱子に対しても、「そんなに心配しなくてもいいよ」、「気にするのが良くないよ」と、言ってあげたかった。
でも、本当の所は、私はまだ幼くて何も知らなかったからすんなりと状況を受け入
れられたのかもしれません。
受験で一緒になった人達と仲良くなり、いろいろ話をしたのですが、彼女たちが心配していることは朱子と同じでした。一人暮らしのことや、大学に入ってからのことをすごく心配していました。だから、彼女たちがこの本を読んだらとても共感するのではないでしょうか。
もちろん、私にも共感できるところはたくさんありました。最も納得できたのは、
キャラクターの描き方です。「あらあら」と思いながらも、「いるじゃん?」ってい
うキャラクターばかりが登場します。中でも私がかなり好きだったのは、青子叔母さんです。素敵な人だし、こんな叔母さんになれたらいいなと思いました。
彼女は、自分の生き方というものをしっかり持っているのに、それを朱子に押しつ
けるところが全然ありません。そういうところが、 一人の女性としても、人間としても魅力的で、尊敬できる。
実は、うちのママとちょっと似ています。 ママは青子叔母さんほど大人ではありません。私もママも、自分の好きなことがあると走ってしまうタイプで、性格も似ているのでよくケンカをします。
電話で喧嘩をすると、ママは途中でガチャッと電話を切ってしまったりもします。それで、あとからファックスで「ごめん」とか書いてきます。普通、お母さんというものじゃそんなことはしないし、青子叔母さんと朱子はケンカしそうにもありません。
けれど、自由主義で自分の生き方をしっかり持っていて、凛としているところはよく似ています。
トリュフの話もそうですが、青子叔母さんは、朱子にいろいろな話をしてくれます。うちのママも、私が子供のころから、生き方的な話をずっとしてくれていました。ママは、「一つのことに全部自分をを捧げちゃったりするような人にはならないでね」と、いつも私に言っていました。恋愛でも仕事でも何か一つのことに夢中になって見境がなくなる人はすごく嫌いだと、ママは言います。
私が仕事を始めるときには、こんなことを言ってくれました。「涼子の一番したい
ことは仕事で、それが涼子の夢だし未来でもある。でも、もし、人気がなくなった
り、いろんな事があって涼子が仕事ができなくなったときに、これをやって、もう
ちょっと生き残ろうと妥協するような人間にはならないで。プライドのない人にならないで」と、ママは言いました。
朱子が青子叔母さんに影響されたように、私もママに感化されています。だから、
登場人物の中では叔母さんに一番感情移入していました。
朱子に髪の毛を切るように青子叔母さんがアドバイスをするシーンも、気に入って
います。「うん、いいアドバイスだな」と思いました。私はショートのほうが好きだからずっと短くしていますが、中学二年のときは長い髪でした。長い髪にしていると、なぜだかおとなしくなってしまいます。
ショートにするほうが垢抜けるという事もあるので、あのシーンを読んでいて、「ああわかるな」とわくわくしました。こんな風に、今の女の子の気持ちや気分がファッションや風俗を通して描いてあるシーンは、心が躍りました。
もう一人、登場人物の中で大好きだったのが瞳ちゃんです。彼女は帰国子女で、考え方がすごくプラス思考でカッコいいのです。
だから、槙原さんと寝たいと思ったらためらわずに自分から言ってしまう。そういうところが気持ちよかった。槙原さんとのことを朱子に告白するところのセリフや、朱子に送ったファックスの文句は、全部大好きでした。私自身、とてもプラス思考なので、潔いのが好きなのです。
槙原さんは、お仕事を一緒にしたら楽しそうです。カッコいいし、ずっと少年でいたいというところは合いそうですが、女の子をリードするタイプだから私は好きにならないと思う。強引な人やワガママな人は、私の恋愛対象の選択肢の中には入っていませんから。
主人公の朱子に関しては、少し複Gです。私も、手紙を書くと、めちゃくちゃとか、とってもとか、すごくとかいう言葉をたくさん使ってしまうので、バカっぽいからどこを削ろうかといつも考えてしまいます。だから、朱子が槙原さんに手紙を書くとき、おいしかったとか、うれしかったとかだけでは何か寂しいので、「とても」をいっぱい使ってしまう気持ちは、よくわかりました。
でも、朱子は泣きすぎです。涙には共感できなかったから、朱子が泣く度に「泣くな、泣くな」と思いながら読んでいました。
でも、朱子は泣きすぎです。涙には共感できなかったから、朱子が泣く度に「泣く
な、泣くな」と思いながら読んでいました。友達にも、彼女のような人はいないタイプです。なのに、読みながら朱子はどうなるんだろうと心配していました。すっかりストーリーにひき込まれてしまっていたようです。
実は、これまで恋愛小説というものをほとんど読んだことがありませんでした。す
ぐに感情移入するタイプなので、かえって読むのを避けていたのかもしれません。映画の原作を読むときは一つ一つのシーンを考えてしまいます。考えて、いい言葉に出会うと線を引きながらじっくり読み込むのが好きなのです。だから、生意気にも恋愛小説はあまり意味がないのではと思っていました。
でも、「東京デザート物語」を読んで、なぜみんなが恋愛小説を読むのか、わかっ
た気がします。ちょっとしたディティールに感情がぐんぐんと動かされるのは、読書の醍醐味なのかもしれません。林真理子さんの小説をもっと読んでみたいと思いました。(完)
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